日本代表、3度目の出場
40歳の誕生日を目前に控えた今、オレ様は自ら辺境地帯に身を任せ、電気も電話も水道もトイレもカラオケもパソコンも何もない砂漠のど真ん中でオーストラリア全土から数百人は集まっているであろうアボリジニの女性たちとともに大地との共存を謳歌し、30代を自分らしく締めくくろうとている。
そう。今年も招かれた1年にたった1度だけ行われる伝統的なアボリジニの女性の儀礼。そこへは許された者だけが許された場所で、それぞれの部族が世界存立のストーリーを見事な歌や踊りで披露し合うとてもスペシャルなひとときだ。儀式の様子を撮影することは一切禁止。またその内容を出版したり公の場で発表することももちろん禁じられている。
そんな大イベントに日本人代表(←ここ、特に強調!)として参加を認められ今年で3度目の出席となったわけではあるが、不思議なことに初回・2度目に比べると意外と身体も心も100%異空間・異環境のこの場所に結構順応しているオレ様なのだ。
思い起こせば初回参加のときには何が何だかまるで勝手がわからず、もう初日から逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。それにブッシュでの用足しにとうとう最後まで慣れることができず、8日間ずっと便秘だったけ。何たってオーストラリアのブッシュにはマジで毒蛇があっちこっちに潜んでいるんだからね。
万が一、用足しの最中にお尻をがぶりとやられたりしたら…そう心配するだけで緊張しちゃうではありませぬか。ウ○コ様だってそりゃおっかなくて出てこられやしない。
そして2年目。何にもない砂漠のど真ん中での長期滞在となると、水や食料の補給をローカルの政府に依頼することになる。毎日日替わりで担当の女性スタッフから麻製のでっかいバックを二つずつ配られるのであるが、そこには朝食用のコーンフレーク・紅茶・砂糖・コンビーフの缶詰・インスタントチキンヌードルなどどれもこれもが乾物中心のものばかり。何たってそこは砂漠のど真ん中。
貯蔵する冷蔵庫も何もないんだから仕方がないのではあるが。だからこそ寝ても覚めてもオレ様の頭の中に浮かぶのは、冷たいビールと真っ白いピカピカ光るご飯。ここまで自分が食い意地が張っているとは考えてもみなかったが、大体人間というものは食事からホームシックにかかるらしいと以前誰かに聞いたことがあったが、まったくその通りだと思ったもんだ。
新鮮なお刺身とあったかい味噌汁がああ、今すぐ食べたい…そんなことばかり考えていたら頭の中がもうマルコメ味噌でベタベタになっちゃった感じだったもんね。
そして食料と一緒に20リットルタンクの水がそれぞれのキャンプの人数分だけ配られるのだが、これはもう毎日あっちこっちで奪い合いのケンカとなる。たとえそれがぬるくてまずくて臭い水でも、砂漠のど真ん中では何よりも貴重なものであることは間違いない。
そうやって命がけで獲得した水であったが…何とまあ、少し腐っていたらしくてそれを知らずに飲んだオレ様は儀式の間、ずっとずっとずーーーっと下痢ピーだったのさ。初年度には便秘で苦しみ2年目にはまさか下痢ピーでもがきあえぐだなんて、これをアボリジニワールドへの登竜門と呼ぶのにはあまりにもひどすぎやしないか。
そこで迎えた3年目。3度目の正直とはよくいったもんだが、先ほど身体も心も100%順応している、とひとまずいってはみたものの、やはり日頃現代文明にどっぷり漬かっているシティーガールのオレ様には耐え難いことばかりではある(40歳にもなってガールとはかなりずうずうしいじゃろ…と書いた途端、大いに反省《涙》)。
幸いウ○コ様は4日半目で顔を出してくれた。これで腹もすっきりし、おならも出なくて絶好調。乾物ばかりの食事も慣れれば意外と平気なもんだ。余裕を見せて毎日日記らしきものまで書いている。が、あとで読み返してみると6日目ですでに中断。儀式は10日間あったのだが最終日に近づくにつれてもう疲労困憊。
毎晩気絶するように自分の寝袋へ転がり込んだ。そして眩しいほどの満点の星空を眺めながら…「ああ。あのお星様達がみんなごはん粒だったら一体茶碗何杯分になるんだろう…」そんなことをぼんやり考えているうちに瞬く間に深い眠りにつく。
今回はその日記を少し公開してみたいと思う。誠に残念だが儀式そのものの内容をここでお伝えすることはできないので、それにのぞんだオレ様の「砂漠忍耐ド根性物語」で我慢いただこう。
5月26日(金)
カンタス航空796便でアリススプリングスへ。何とこの出発の2日前に日本から戻ったばかりのオレ様はスーツケースを部屋に放ったまま、慌てて今度はキャンプ用の荷造りをしてほとんど徹夜で空港へ向かった。…そしたらメルボルン空港が濃霧のために出発2時間半遅れとのアナウンス。待っている間ロビーでうっかり寝てしまい、飛行機に危うく乗り遅れそうになった。優しいおじいさんに肩をポンポンと叩かれ慌てて目が覚めたオレ様であった。機内では食事も取らずに再びひたすら爆睡。
アリススプリングスへ到着し、翌日からのキャンプに備えて少し買い物を。当分快適ライフとはおさらば…ならば今日から練習を…とテレビも電話も何もない寂れた暗――いモーテルに宿泊し、それでも食事だけは豪勢に…と大盛りペッパーステーキとサラダをほおばってさっさと就寝。明日からは何たって長距離運転だからね。今夜はぐっすり眠っておきましょう。
5月27日(土)
AM7:30起床。
前日打ち合わせをしておいたローカル政府、セントラル・ランド・カウンセルの女性スタッフLISAと午前9時に待ち合わせ。彼女と一緒にまずは 350kmの道のりを交代で運転し、オレ様のセカンドホームでもあるアボリジニ居住区・マウントリービックへ儀式に参加をする女王様たちをピックアップしに行く。
久しぶりの女王様達との再会。熱い抱擁。「今年もよく来たな」と全員が声を揃えて出迎えてくれた。たまらなく嬉しい瞬間である。中にはほっぺにチュウをしてくれるおばあちゃんもいたが、彼女の口臭があまりにも強くて目まいがしそうになった。体臭は変わらず「鉄棒」みたいなにおい。ありがたや…ありがたや…。マウントリービックからの今年の儀式参加者は総勢12名。
2台の車に分乗して現地へ向かう。私の車には7名乗車。目的地までは軽く1500kmはある。もちろん一日では到着できないため途中、適当な場所を見つけてまずは野宿。日が暮れた砂漠の気温はとてつもなく低いので、タオルを首にぐるぐる巻いて茶巾寿司のように寝袋に丸まって就寝。とほほ。夕飯はポテトチップスのみ。腹減ったなーーー。
5月28日(日)
AM5:45起床
まだ辺りは真っ暗だっつーのに儀式への参加で興奮を隠せないアボリジニのおばちゃん達のうねるような、まるで経典でも聞いているかのような歌声で目が覚める。おまけに極寒。ああーー! もう眠れやしない。
1 分でも早く目的地に到着したいおばちゃん達はもう出発の準備開始。やる気満々。1分でも長く寝ていたいオレ様は、しばし寝たフリをしてみるが全く効果なし。さっさと起きて運転準備させられる。時間がないので顔洗えず。いや、時間も確かになかったが、それよりも肝心の水がなかった。
ただでさえ貴重な飲料水をまさか洗顔したいから少しちょうだい。なんてことをこの奥ゆかしいオレ様が仲間達にいえるわけがない。当然のことながら歯も磨かず。よーーし。こうなったら儀式の間の9日間はずっと歯を磨かないでいてみようではないか。そしたら歯クソがどれぐらいたまるものなのか、リサーチしてみてはいかがなもんだろうか。そう思って舌で奥歯を触ってみるともうすでにざらざらしていた。
こうしてスタートを迎えた3年目のアボリジニ儀式。往復3000km以上の運転で意識もうろうとなり、道中のパンク修理で手はボロボロ。洗顔できずに毛穴ブツブツ。まるでアボリジニアートの点描画のようだった自分の顔。「こんな過酷な旅は今年でもう最後」。そんなことを毎年いいながらも、気がつくと再びこの砂漠にどっぷりと身を任せている自分。
そんなこんなでお伝えしたいことはまだまだトラック100台分ぐらいあるので、日記の続きはまた次号で。お楽しみに~!
「癒しフェア」2006年 7月29日・30日
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