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エミリー・ウングワレー

1910年ごろアリススプリングスの北東にあるアボリジニ居住区、ユトーピア地域に生まれる。

今日ではオーストラリアを代表するアボリジニ画家として幅広く知られ、国内はもとより世界中のメジャーな美術館、またアートコレクターたちより非常に高い評価を受けている。

オーストラリア先住民アボリジニであり、砂漠で生涯を送った作者が初めて作品を発表したのは年齢が70代後半、1988年であった。以後、86歳で生涯を閉じるまでのわずか8年間に作者は、次々と図柄や手法を変えながらおよそ3000点以上もの作品を残したという、まさに彗星のごとく現れた驚くべき
人物として大きな注目を浴びたことは言うまでもない。

エミリー・ウングワレーは極めてモダンな、美しく自由で革新的な芸術を創造し、20世紀が生んだもっとも偉大な抽象画家のひとりと言われている。

1996年9月に永眠。その翌年の1997年、ベネチア・ビエンナーレ美術展にはオーストラリアの代表画家として特別出品され、世界的に高い評価を得たことで多くのアートファンたちを魅了した。

作者の独創的な技法である大きなドット《点描》を何層にも重ねるスタイルはパワフルで尚且つエネルギッシュでありながらも、優雅で華やか。観る側の心を大きく揺さぶる力がある。

そんな彼女の作品が2007年、オーストラリアで行われたアートオークションで1ミリオンオーストラリアドル(日本円でおよそ9800万円)で落札されたことは大きな話題になった。オーストラリアの女性画家としては当時最高落札価格となり、いまだにこの記録は破られていない。

西洋美術とは無縁の環境で生まれ育ちながら、革新的な絵画世界を創造した画家の魅力溢れる大回顧展「アボリジニが生んだ天才画家、エミリー・ウングワレー展」が2008年に大阪国立国際美術館・東京国立新美術館で開催された際、日本ではまだ無名であった高齢の豪州先住民の女性画家の展示会に、延べ12万人以上の観客を動員したことは誰もをあっと言わせ大きな話題となった。(この展示会は天皇陛下ご夫妻もご高覧された。)

あれから16年の歳月が流れた今もなお「記憶に残る素晴らしい展覧会」だったと多くの人々が高く評価をしている。